本を開いてまず最初の「はじめに」の頁で、言ってしまえばもう最初の一文、
マーケットで見かけた旬の素材や、宅配で届いた野菜で、サッとおかずが作れたらいいと思いませんか?料理本やネットに頼らずに。
有元葉子(2017年)『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』
を読んだ瞬間、「ずっと探していたものを見つけた!」とすっかり心を奪われました。
料理も苦手な私。
正直料理に関しては、どこに向かっているかのゴールがよく分かっていませんでした。数々の料理本を書いていらっしゃる有元葉子さんの本の中でも、この本は私に「料理をするってこうなりたいっていうことだったんだ!という絵を見せてくれました。
この記事では、私を筆頭に、料理に対して苦手意識のある方にとって、救世主的な本を紹介します。
料理下手の悩み
なぜこの本がそれほど私に響いたのか、それは私に、料理が苦手な故の長きにわたる苦悩の歴史があるからなのです。
料理本の分量が余計悩ましい
料理本には必ず載っている分量。
それでぴたっと自分が好きな、美味しい味になれば良いのですが、大抵本に書いてある材料が足りていなかったりして(料理本で家にあるものだけで作れた試しがありません)、何か足した方が良い気がします。
そうこう少しずつ味を調整してくとだんだん訳が分からなくなってくるのが常。そして焦ってきた料理下手は、ある瞬間大胆になるのです。どばっと調味料を入れたり、はたまたその本に書いていないものを隠し味として入れてみたりと大暴走。
料理上手の姉からは、「下手こそすぐ創作料理をしたがる」とよく言われました。
いつも味付けは一緒なのかという疑問
不器用な料理下手でも頭でっかちな私は、「その時々で旬があったり、野菜の大きさも違うし、天気や湿度で、さらには気分で味付けも違うんじゃないのか」と(たいして作れないのに)思っていました。
さっと料理を感覚で作れる人に憧れる
毎回計量スプーンで機械的に分量を量るのは、本質的じゃないと違和感を感じていた私。
料理上手な方でも毎回計量をきちんとされる方もいますが、私が目指していたのは感覚でさっと作れる人でした。
「どうやって作ってるの?」と聞かれても、「適当よー」と答える感じの。(料理下手の適当とは雲泥の差なんですが…)
おすすめポイント
ずっと知りたかった料理の理論が分かる
ささっと感覚で作りたいといっても、そもそも理論派の私(言い換えると、頭でっかちの不器用タイプ)。
なぜこの塩を今入れるのかを知りたいのです。
でもそういうことを書いてある本に今まで出会えませんでした。
そういうなぜこの調味料が良くて、このタイミング入れるべきなのかの理由を教えてもらえるチャンスがなかったのです。
私にとっては料理も仕事と一緒で、まずは理論を知りたいのです。
一度そのしくみが分かると応用が出来るのに、そこが分からないのでいろんなレシピを何回も見ながら別々に覚えなければいけない気がしていました。
不器用なロジカルな人間が、料理だからって急に器用な感覚派の様に出来るわけではないのです。
その点この本は、シンプルながらずっと知りたかった料理のルールや基本的な考えのようなものを教えてくれます。
また鉄のフライパンの扱い方も丁寧に理由と共に教えてくれるので、この本を買ってしばらくして長年気になっていた鉄のフライパンも新調しました!
優しい語り口で料理の基本を教えてくれる
まるで教え上手なお母さんが教えてくれているような感じの文章。
ざっくりしているけれど大事なところはしっかり押さえている感じ。
「そんなに難しく構えないでざーっとでいいのよ、味見してこれを煮詰めたら美味しくなりそうかどうか!」と教えてもらっている気持ちになります。ですので読みやすくて、頭に残りやすいのだと思います。
料理本にしては写真がとても少なく、文章がメインです。だからこそ分量(ほぼ書いていません)に頼ることなく、自分の五感を使って料理する練習が出来るのだと思います。
自分のゴール(理想の料理のスタイル)が分かる
この本を買って一番良かったことは、今まで何となく感じていた違和感の理由が分かったことです。
私は、「家にあるのもでさらっと作れるようになりたい、スーパーで売っているのもを見てレシピサイトで検索をしながら買い物なんて本当はしたくない」という自分の気持ちに気づきました。
何か料理をする度にいろんな本を開いたりネットを調べて、そこに載っているお気に入りのレシピを見ながら料理をするなんてしたくなかったんですね。
そう、仕事と一緒で料理にも、もっとコントロール感が欲しかったのだと思います。
まとめ
もちろんこの一冊で全てを網羅します!とは言わないのですが、なんだか気持ちの良い上手なマッサージを受けているみたいな、「あー、そうそう。それを知りたかったの!」と、ちょっとだけ何かを掴めた感じがします。
レシピというより心構えが分かる本といった気もします。
もちろん料理上手な方が読んでも「美味しそう!今度作ってみよう。」と感じるレシピがたくさん載っているのですが、特に料理に苦手意識がある人に読んで欲しい一冊です。
料理上手には不要で当たり前かもしれないこともさらっと説明されていて、私自身もスタートラインにようやく立った気分。
まだまだこの本に頼りきりの私ですが、早くこの本も見ずに自分の感覚で買い出しからお料理まで楽しめるようになれたら嬉しいです。